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2013年8月26日月曜日


NPO法人International Student Conferences, Inc. (ISC) 代表    


篠宮 有輝さん




 アメリカで働くとはなにか、を身を持って学ばれてきた篠宮さん。大学でのアメリカ留学をきっかけに、現地で保険会社のメットライフ生命に就職。その後アメリカの司法試験にも合格され、現在は
あのヘンリー・キッシンジャー氏や宮沢喜一元首相も参加した「日米学生会議」を運営するNPO法人の代表に就任している。

 就職活動では、外国人の自分を受け入れてくれるアメリカの懐の深さに驚いたという篠宮さん。同時に、アメリカでの仕事で日本人としての価値にも気付けたという。「自由の国アメリカ」の本当の魅力を感じつつ日本人としての自覚を持つ、それが現地で職を手にするということなのだろう。




英語好きが高じてアメリカ留学

Q. どのような経緯でアメリカに?

私、生まれがオハイオ州なんです。両親の仕事の関係で、1歳のときには日本に帰国してしまったのですが、生まれた国がどういうとこなのか行ってみたいという気持ちはずっとありました。
中高時代は英語が本当に好きで、学校の宿題はせずにNOVAに通い詰めていたほど。もう英語で外国人の方とコミュニケーションを取ることが、楽しくてしょうがなかったんです。

こういうバックグラウンドだったから、高校で進路を考える時期になってアメリカの大学も考えていました。そんな時にグルー奨学金という制度を見つました。これは第二次世界大戦直前まで駐日大使をされていたジョセフ・グルー元大使が、戦争を防げなかった悔いと日本が大好きだという思いから、アメリカの大学に奨学生を派遣するために設立された奨学金制度です。応募したら、これが採用していただけて。オハイオ生まれということで、オハイオにあるオーバリン大学に入学させていただき、恵まれた奨学生としてアメリカに戻ってくることができました。


ワシントンDCで掴んだ就職のチャンス



Q. アメリカでの就職活動はどのようにされましたか?

オーバリン大学には4年生の時に、生徒が自分で1ヶ月間のプロジェクトを決めて取り組むWinter Termというものがあるんです。オハイオの冬は寒くて授業もできないからというのもあって。(笑)それで私はワシントンDCに来て、民主党のグレゴリー・ミークス下院議員のもとでインターンさせてもらいました。雑用ばかりかと思っていたら、意外と委員会に出す資料とかも書かせてくれて、これがもう楽しすぎて。1か月で終わるのはもったいないからと残ることに決めて、大学最後の学期はインターンを単位にして卒業しました。6か月間インターンを続けましたが、当時はまだ民主党が弱かったし野党になると仕事も少なかった。そこで仕事探しをはじめました。


ちょうどメットライフがGovernment Relations(政府渉外部)のポストを募集しているのを見つけました。今でこそメットライフアリコとして有名ですが、当時はメットライフが保険会社ということすら知らなかった。でも大きそうな会社だしということで受けたら、ポンと決めてくれた。
この就職活動で、アメリカってすごい国だなって思いましたね。やっぱり私って日本人じゃないですか。ロビー活動なんて普通はアメリカ人の仕事ですよね。でも仕事ができると見込んで自分にまかせてくれた。そのアメリカの懐の広さには、正直驚きました。


アメリカで気付いた「日本人としての付加価値」

Q. これまでに掴んだチャンスについて教えてください。

入社4年目でメットライフが日本に進出することになって、もう大チャンスだと思いましたね。下っ端だけど何でもやりますって言いました。そしたら日本の官庁に手紙を書くときのチェックとか、日本語の重要書類の翻訳だとか、結構任せてもらえました。
その件をきっかけに、気づいたんです。本当の自分の付加価値は、自分が日本語を話せて、日本人であることなんじゃないかと。ここで自分が日本人である価値っていうのを生かさない手はないなって、思いました。また、この思いがきっかけで、現在代表として働いているInternational Student Conference(ISC)のポストへの転職を決めました。

Q. ISCというのはどのようなNPOですか? 

国際的な学生交流を推進しているNPOです。1934年に発足して歴史の長い日米学生会議(JASC)と2008年から始まった米韓学生会議(KASC)の開催が主な活動です。どちらの会議も両方の国から同数の大学生が集まって、1か月にわたって共同生活を送り、様々な問題をとことん議論しあいます。会議を通して両国の大学生の交流をはかり、お互いを深く知ってもらうことを目的にしています。
小規模ですが長い歴史があるNPO団体で、宮沢喜一元首相ヘンリー・キッシンジャー氏日米学生会議のOBです。この会議がきっかけになって、実際に日本と関わる仕事をやりたいという人が出てきて、将来の日米関係を担うプロフェッショナルが出てきてくれるので、非常にやりがいのある仕事です。


Q. 代表である篠宮さんに求められている役割は?

NPOって本当に資金集めに翻弄します。それから資金やプログラムの拡充のための情報集めですね。これらの基盤になっている人脈、ネットワークの構築も大切な能力だと思います。
もともとおしゃべりで人と関わるのが好きだから、この仕事は自分に合っていると思うんです。自分の強みを生かせていると思います。


Q. ネットワーキングのコツは?

損得関係なくいろいろな人と話してみることが大事だと思います。自分の業種との関係とかで損得はどうしても考えてしまうけど、それで特定の人とだけ人脈を広げるのは、あまり良いネットワークとはいえない。というのは、自分の利益だけ考えて動いていたら本当に助けてほしいときに助けてもらえないんじゃないかと思うんです。どこで誰がどうつながっているか分からないし、意外なところから助けがくるものなんです。

私の場合は資金集めの手段としてもネットワークはすごく重要です。でもただお金くださいって言ってくれる人はいない。自分の代表する団体がこういうことをやりたいっていうビジョンを持ってそれを100人に話す。そしたら10人は面白そうだねって言ってくれて、3人は本気でやろうと言ってくれて、そのうち最後に1人が資金を出してくれる。これで万々歳なので、色々な人とお話しするようにしています。そうすると意外なアイディアがもらえて、考えが深まることも多いです。



内向きな今だから海外でのチャンスは大きい

Q. アメリカで仕事に就いて良かったと思うことは何ですか?

日本とアメリカの両方の軸が出来たことでしょうか。大学の時は、違いました。アメリカにすっかり溶け込みすぎて自分はアメリカで生きてけばいいやくらいに考えていました。でも会社の日本進出というきっかけがたまたまあって、考えが変わりました。先にお話ししたように、日本人としての付加価値にも気づけたんです。
今は日本人の若者が内向きだといわれている時代なので、余計に海外に出る人にとってはチャンスかもしれないです。海外に出れば色々な場所で日本人としての価値が求められているので。今の仕事を通じて、アメリカなど海外で活躍する日本人が増えるお手伝いができればと思います。


2013年6月18日 @ ワシントンDC
聞き手・写真 橋本悠




―篠宮有輝さん略歴―
2001年9月:グルー・バンクロフト基金、奨学生選出
2005年5月:オーバリン・カレッジ卒業(B.A.)
2005年6月:米国下院議員事務所インターン
2006年6月:米国メットライフ生命入社
2008年9月:アメリカン大学ロースクール夜間部入学
2010年12月:アメリカン大学ロースクール卒業(J.D.)
2011年6月:NY州とNJ州にて司法試験合格、弁護士登録
2012年9月:ISC代表就任(現職)

- Aspen Ideas Festival Scholar (2013)

- US-Japan Council (米日カウンシル)Emerging Leaders Program (2013)

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